アウトドアでは水の確保に気を使いますよね。綺麗に見える川や沢の水・湧き水をそのまま飲むのは危険なので、事前に用意して持っていくか、現地で生水を飲めるように処理して使うかの2択です。
基本的に体内摂取する水(飲料・料理)はミネラルウォーターか浄水したものしか使用しません。なので、テント泊の登山においては浄水器を担いで登ります。山の「水場」と言えども安心できません。なぜなら、大腸菌が検出されている水場があるからです。(後述)
浄水器を携帯せず、煮沸消毒、アイオダインで消毒という手もありますが、煩雑だったり、必要な時にすぐ飲めない、重金属などは取り除けないなどの理由で、携帯用の浄水器を使っています。
20年以上前に本格的に登山を始めた頃、初めて購入した浄水器がKatadyn(カタダイン)のポケットセラミックフィルターでした。ただフィルターの手入れが微妙に面倒だったりと使い勝手が悪かったので、US ArmyやUNのPeace Keeping Forcesなどで採用されているGeneral EcologyのFirst Needに買い替えて、今に至ります。
今回、Greeshow様より、GS-2801の製品レビュー依頼を受け、「忖度なしのレビューでよければ〜」とお伝えしたところ、快諾いただいたのでレビューさせていただきます。それでは通常の辛口運転で出発進行〜。
その水、本当に大丈夫?
レビューに入る前に、自然界においての水のお話を。きれいに見えても、こんな危険性が潜んでいるということをお伝えしたいと思います。
きれいに見える水の危険性
1 水源の特定が困難
- 沢・川や湧き水の水は、一見きれいな水に見えても、その水源がどこであるか、どのようなものが流れ込んでいるかなどを特定することが困難。そのため、安全性が担保できない。
2. 病原体や寄生虫の混入
- 細菌: 大腸菌やコレラ菌など、様々な病原菌が水中に存在する可能性あり。体内に入ると、下痢や嘔吐、発熱などの感染症を引き起こす恐れが。
- ウイルス: A型肝炎ウイルスやロタウイルスなど、ウイルスも水中に混入する可能性あり。消化器系の感染症を引き起こす原因。
- 寄生虫: エキノコックス、クリプトスポリジウム、ジアルジアなどの寄生虫が、動物の糞便などを介して水中に混入することがある。腸内感染症を引き起こし、下痢や腹痛などの症状が現れることがある。
3. 水質汚染
- 化学物質: 農薬や工業排水など、様々な化学物質が水中に混入している可能性がある。大きな河川の下流で採取した水を分析し、農薬の存在が明らかにしている調査研究あり。
- 重金属: 鉛や水銀などの重金属が水中に含まれている場合もあり。神経系や腎臓に障害を与える可能性がある。
「水場」と呼ばれる場所でも、危険が
関東のハイカー・トレイルランナーの方に馴染み深い、緑豊かな丹沢。丹沢大山自然再生委員会が行っている水質調査にて、令和4年(2022年)の調査では、18ヶ所の水場のうち、大腸菌が3ヶ所から検出。一般細菌の基準値以上が1ヶ所、基準値以下ではあるが5ヶ所から検出という結果に。
丹沢で沢水・湧水を飲んでもいいですか?という質問に対し、
・検出場所:飲んではいけません。
・未検出場所:その場で飲むことをおすすめしません。
・検出・未検出場所に関わらず、必ず「煮沸」などしてから飲んでください。
という記載となっています。
少し古いですが、トレランの日本山岳耐久レース:ハセツネカップの舞台でもある奥多摩にある御前山の水場を東京都山岳連盟が1999年〜2001年に水質調査を行ったところ、こちらも大腸菌が検出されています。調査する月、年によって、変動があるのも興味深いデータでした。御前山以外の場所でも同じことがどこでも起こり得ると思うので、調査したその時期は問題なくとも、数カ月後は汚染されている可能性があると考えただけでも、生水は気をつけたほうが良いと改めて思い知らされました。
日本勤労者山岳連盟の2004年の時報において、日本トイレ協会の集計によると、全国234地点で調査したところ、約40%の95地点で大腸菌が検出されたという記載が。怖すぎ!
古い調査では、山での「トイレ問題」が関わってるように見受けられます。奥多摩は2001年時点では減少傾向となっていましたが、現在がどうなっているか、気になるところです。
きれいとさている水場もいつ水質汚染が見られるか、誰もわかりません。丹沢大山自然再生委員会が推奨しているように、どんな水源でも生水は飲まず、なにかしらの処理をすることをオススメします。
Greeshow GS-2801 携帯浄水器
自然界での生水の危険性がわかったところで、今回の本題であるGreeshow GS-2801を見ていきたいと思います。
スペック
サイズ:16.5 x 5.3 x 10.7 cm
重量:350g
フィルター濾過能力:0.01μ
フィルター寿命:使用日数180日/1,000リットル(交換フィルターの販売あり)
濾過流量:0.7リットル/分
バッテリー容量:2800mAh
フル充電使用時:連続使用時間180分 / 浄水量120リットル
本体の寿命:累計30,000リットル
同梱アイテム
左から水源から水を取り込む用ホース、フィルターを浮かせるフロートと水源に入れる外付けフィルター、浄水された水を通す透明なホース、USB-Cケーブル、クリップ。持ち物をミニマルにしたい場合は、黒いホースと外付けフィルターのみでOKです。
本体と付属品をひとまとめにできるポーチ。カラビナとMolleシステムや腰のベルトなんかにも通せるスナップボタン付きのベルトも付いてます。生地もしっかりしていて、これだけ単体でも販売できそうなクオリティです。
ここがすごい
・0.01μ フィルター:携帯型浄水器では最強だと思われます。Sawyer(ソーヤー)が0.1μ、Katadyn(カタダイン)が0.2μ、First Needが0.4μです。ただ、除去できる有害物質はどのメーカーも同じなのでご安心を。0.5μ以下であれば、農薬、除草剤、重金属、鉛、クロロホルム、バクテリア、シスト(嚢胞)、ウイルスを除去できます。これらの携帯浄水器より更に除去物質に差が出るのは、銅、水銀、海塩などを浄水できる、0.001μ〜0.0001μのReserve Osmosis(逆浸透現象)を利用したサイズの大きな浄水器になるので、携帯できる浄水器とのしての機能は100点満点です。
・電動で浄水!:これが他の携帯浄水器にない、唯一無二な機能です。ボタンひとつで、自動でポンピングしてくれるという機能。ポンピングの音もとても静かです。GS-2801は、毎分0.7リットルのスピードで濾過してくれるので便利。ポンピングやパウチを押し出すアクションで濾過できる流量が少ないと疲れます。特に一度に大量の水を浄水したい場合はかなり楽チン。
・意外と軽い:350ml缶、GS-2801、First Needを並べてみました。(本体のみ)GS-2801はバッテリーが含まれているのにも関わらず重要が317g。First Needが393gでした。これは本当に驚き。
この軽さの秘密はフィルターのサイズ。Sawyer ミニ P128のフィルターのように小さいフィルターだからこそなせる技。お隣のFirst Needは、青いデカい筒が丸ごとフィルターです。
実際にヤバそうな川で使用してきた
東京都を流れる多摩川の支流の一級河川、野川で使ってきました。下流側の自宅からの往復がちょうど21kmくらいで、週末によく利用するランニングコースの折り返し地点である野川公園のすぐ脇で試飲。野川の水源は国分寺市内数カ所から出る湧き水ですが、ここから更に上流に行くと普通に住宅地脇を流れているという川…。おまけについ先日の大雨で氾濫警報が出てました…。ここは意外や意外、荒れた形跡はなかったですが、ここから数百メートル下流にある、川のすぐ脇にあるテニスコートが水浸しになった形跡があり、流れ着いた草木でめちゃくちゃな状態になっていました。雨量が多い時は下水が川に流れ出る事もあるので、正直、お腹壊さないか、めっちゃ不安でした。大雨から数日経っているけど、もうこれはGreeshowさんを信じるしかない!(祈り)
滝汗で暑くてぶっ倒れそうだったので、先に野川公園の自動販売機でコーラを頂きました。汗が落ち着き、帰路に向かう途中で川岸に降りて浄水スタート!
パーゴワークスのRush 7R(小さなトレランザック)に突っ込んでいったので、できるだけ軽量にしたく、浄水された水が出てくる排出口に取り付けるホースは持っていきませんでした。本体を縦に普通に置いても水は出ますが、風があると煽られるので、ホースなしだと傾けるほうがこぼさず注水できます。
気になるお味は… 普通に美味しいお水!そして、試飲してから2日経ちましたが、お腹を壊すこともありませんでした。(笑)こんなコンパクトな筐体から、ボタンひとつで自動で水が出てくるなんて、テクノロジーの進化って凄い…とつくづく思ってしまいました。
あと、使い勝手が良かったのが、ポーチ。スポッとストレスフリーで本体を取り出し・収納できました。メッシュ部分はポケットになっていて、ここに付属品を格納して持ち運べるので、これ一つでまかなえるので便利。
ここがイマイチ
正直、クリティカルなイマイチポイントはありませんでした。使用後のお手入れであるバックウォッシングのやり方も簡単だし、造りもシンプル設計なので、「どうしらいいの〜?」と迷うことがありません。ちょっと辛口に「あえて言うなら…」のイマイチポイントをお伝えします。
・水没不可:防滴仕様のようですが、万が一水没させたら乾燥しきるまで使用できない点。乾燥させたら使えるようになるとのこと。川で使用する際は落とさないように気をつけましょう。まぁ、落とすことはないと思いますが…IPX5以上だったら安心ですね。
・使うシーンを選ぶ:GS-2801のユニークポイントの「電動」であることがネックになるケースがあると思います。例えば、登山。わたしなら、残念ながらGS-2801は持っていきません。リスクマネジメントとして、壊れる心配が少ない非電動のものを選びます。人里離れたバックカントリーでのアクティビティも同様かと思います。文明から離れた場所で使用する場合、原始的でシンプルな物のほうが、逆に利便性が高いという場合もあります。
総評
一番活躍しそうなシーンはスバリ!災害時です。健康な成人の場合、1日に必要な水分量が体重1kgにつき約35mlと言われています。体重80kgの人で2.8リットル、100kgなら3.5リットル。フル充電で120リットル浄水できるので、近くに水源がある場合、ライフラインが復旧するまでの間は余裕をもって水の確保ができます。例えば、体重80kgの家族4人の場合でも10日はもちます。災害時の為に使用する場合、浄水した水を保管できる大容量のジャグもお忘れなく!災害時に役立つLEDライトも搭載されていて、至れり尽くせりです。
あとファミリーキャンプをされる方にも便利かと思います。沢山水を持っていくのは結構荷物になりますし…。現地で浄水するという現地調達もアリだと思います。なんと言ってもボタンひとつで勝手に浄水してくれるのは有り難い。
フィルターも1,000リットルで交換なので、フィルターの交換すらする必要の方も多いかも。と考えると、2024年8月現在の実質価格が6500円ほどで、この性能の携帯浄水器はお買い得だと思います。
Greeshow社の浄水器シリーズは、日帰り登山やトレランなどで便利な更に携帯性にすぐれた浄水器もラインナップされていますので、用途にあった浄水器が選べると思いますよ。
Amazonと楽天に直営店があるので、こちらから購入をオススメします。定価が約12000円ですが、セール価格に加え、更にクーポンも発行されているので、めちゃくちゃお買い得に購入できます!
[追記]
新しい別のモデルが発売されました!